数々のポートレイト作品や「ピクチャーズ・オブ・ガベージ」などのシリーズで人気を博してきたヴィック・ムニーズが現在、nca | nichido contemporary art(東京・八丁堀)にて、「Pictures of Paper」シリーズの中から浮世絵をモチーフにした作品を中心に選んだ個展を開催している。同展オープニングに合わせて2年ぶりに来日した彼に、素材と“日本”への想い入れを聞いた。

Photo: Kazuhisa Hatanaka
紙という素材と、日本的なイメージ:
浮世絵との関係に着目
―ムニーズさんと言えば、素材へのこだわりに定評があります。今回の個展では“紙”を取り上げていますね。
私は普段から制作のプロセスを単純化していった上で、素材をイメージへと転化することを試みています。紙は通常、作品のイメージそのものではなくて、作品を支持するもの(支持体)ですが、イメージそのものが紙で作られるということに関心があるわけです。絵画や写真など、ジャンルを問わず、イメージは“透明”なものではありません。日本の折り紙や雑誌などが参考になりますが、支持体をイメージそのものへと転化させていくことによって、両者の関係が議論の的になるわけです。
―今回、作品のモチーフに浮世絵を選んだのはなぜですか。
私は今回の出展作品はもちろん、全ての作品において、制作のプロセスに重きを置いています。浮世絵を初めて見た時に思ったことは“フラットな、薄い”イメージをどのように作り出しているのか、ということです。さらに注意深く見ていくと、どういう順番で色が塗られたのか、どういう工程で作られたのか、といった一種の「物語性」を読み取ることもできます。このような経緯もあり、紙というレイヤー(層)を作品制作に用いることを考えた時に、思い浮かんだのが浮世絵だったのです。さらに今回の展示では浮世絵だけでなく、戦略的に他の西洋的なイメージも織り交ぜています。その際、歌川広重の”海”に対応するような(ウィンスロー・)ホーマーの波のモチーフや、鈴木春信の浮世絵と同じように画面を枝葉によってフレーミングした(マーティン・ジョンソン・)ヒードなど、よく考えられた構図のものを選んだつもりです。
古今東西を問わず、好きなアーティストを問われれば、広重や喜多川歌麿、葛飾北斎といった名前を挙げます。これまで、日本の大衆芸術やポップカルチャーといったものについては村上隆や奈良美智をはじめ、様々なアーティストが取り組んできましたが、私にとって日本のポップカルチャーと言えば、真っ先に頭に浮かぶのは浮世絵であり、北斎の波なんです。そういったイメージが日本人のなかにも染み込んでいると思いますし、今回の浮世絵をモチーフにした作品も日本人への問いかけになっていればよいのですが。

Photo: Kazuhisa Hatanaka
素材と作品イメージとの緊張関係を楽しむ
―ムニーズさんは数々のポートレイト作品でも知られていますが。
ポートレイト制作においても、イメージそのものと素材との関係性に注目しています。怒っている人を描くのにホットチリを使ったり、チョコレートを使ったシリーズでは、キスをしている人もいれば、殺し合いをしている場面もあるという風に、必ずしも素材のイメージと作品のイメージが一致する必要はないと考えています。そこに立ち現れる緊張関係を楽しむことに興味があるんです。
一つのキーワードとして「familiarity:親近感」というものがあります。素材にも言えることですが、ポートレイトのモチーフには映画女優などの著名人や有名ブランドのアイコン、報道写真など、意図して鑑賞者にとって親近感のある素材を選んでいるのです。














